
辞めたい、と思っている。
でも、それを口にすることができない。
上司の顔が浮かぶ。「今辞められたら困る」と言われる場面が想像できる。怒られるかもしれない。泣いてしまうかもしれない。そう思うと、言葉が出てこなくなる。
そういう状態を「弱い」と思う必要はないと、私は思っています。退職を言い出せないことには、ちゃんとした理由があるからです。
職場を辞めるのが怖いと感じてしまう理由
「言えない」のには理由がある
退職を伝えるのが怖くなる背景には、職場の空気があります。高熱で休もうとしたら小言を言われた経験、ミスをしたときに大勢の前で責められた経験、ちゃんとやったのに集団でぐちゃぐちゃ言われた経験——そういうことが積み重なると、「また何か言われる」という恐怖は自然に育ちます。
これは性格の弱さではなく、その環境の中で学んだ反応です。怖いと感じることは、おかしくありません。
看護師特有の「辞めづらさ」
看護師には「人がいないのに辞めるのか」「患者さんはどうするんだ」という言葉が飛んでくることがあります。責任感から、自分が抜けることへの罪悪感も生まれやすい。
もちろん、一人が抜ければ現場は一時的に大変になるかもしれません。でも、それを一人の責任として背負い続ける必要はありません。人が足りない状態を個人の我慢だけで支えているなら、その職場の体制にも問題があります。あなたが一人で背負うことではありません。
すでに眠れない・動悸がする・仕事前に涙が出るような状態なら、限界のサインが出ている可能性もあります。
→ 仕事を辞めたいと感じる時は?心と体が限界を迎える前に気づくサイン5選
自分の意思で環境を選ぶということ
引き止める権利は、誰にもない
退職するかどうかを決める権利は、基本的にはあなたにあります。会社や上司が、あなたの意思を無理に止め続けることはできません。
期間の定めのない雇用契約の場合、民法では退職の意思を伝えてから2週間が経つと雇用契約が終了するとされています。ただし、就業規則に退職の申し出時期が書かれている場合もあるので、余力があるなら一度確認しておくと安心です。
大切なのは、「上司が納得してくれないと絶対に辞められない」というわけではない、ということです。これを知っているだけでも、少し気持ちが変わることがあります。
それでも怖い時は、怖くていい
権利があるとわかっていても、怖いものは怖い。それは正直な感覚です。
普通に話を聞いてもらえる職場なら、自分で伝えるのが一番シンプルです。余力があるなら、就業規則の期日に合わせて早めに伝えるのがスムーズでしょう。
でも、そういう余力が残っていないこともあります。
心と体を守るためにできる選択肢
診断書という方法がある
心がかなり疲れていて、職場に行くこと自体がもうできない状態になることもあります。そういう時は、まずメンタルクリニックに相談してみることも選択肢のひとつです。診断書があれば、それを元に退職や休職の手続きを進めることができます。
「行けなかった自分」を責める必要はありません。その時にできることを、その時の自分なりにやった。それだけで十分です。
逃げることも、人間らしい反応のひとつです。その経験があるからこそ、同じように苦しんでいる誰かに寄り添える自分になれることもある。
第三者を挟む選択肢もある
動悸がする、涙が止まらない、もう職場と直接やり取りする気力が残っていない——そこまで来ているなら、第三者を挟む方法を知っておいてもいいと思います。
退職代行という選択肢があります。「逃げ」と思う人もいるかもしれませんが、職場と直接やり取りする気力が残っていない時に、第三者を挟んで退職の意思を伝えることは、自分を守る方法のひとつです。
ただし、退職代行といっても、できることはサービスによって違います。退職の意思を職場に伝えるだけのところもあれば、有給消化や未払い賃金、退職日の調整など、より踏み込んだ対応が必要になるケースもあります。
特に、有給を使いたい、未払いの残業代がある、強い引き止めが予想される、ハラスメントが絡んでいる場合は、安さだけで選ばない方が安心です。交渉が必要になりそうな時は、弁護士が関わる退職代行など、対応範囲を確認して選ぶことが大切です。
退職代行を使うことへの罪悪感や、選ぶ時の考え方については、こちらの記事で詳しく整理しています。
→ 職場を辞めるのが怖い人へ。今の状況を整理して自分を守るための考え方
今の自分を認め、無理をしない考え方
退職を言い出せないのは、弱いからではありません。
怒られそう、引き止められそう、迷惑をかける——そういう不安は、職場の空気や経験から生まれた自然な反応です。そしてあなたには、退職を自分で決める権利があります。誰もそれを止めることはできません。
自分で伝えられるなら、それが一番シンプルです。けれど、どうしても怖い、職場と直接やり取りする気力が残っていないという時は、退職代行という選択肢を知っておくだけでも少し安心できるかもしれません。
今すぐ何かを決めなくても大丈夫です。ただ、「言えない自分はダメだ」とだけは、思わないでほしいと思っています。

