日常のちょっとしたイライラやモヤモヤ。
その気持ちをよく観察してみると、自分でも忘れていた過去の出来事や、思いがけない本音に気づくことがあります。
今回も、そんな出来事がありました。
最初は、ある会社の対応に腹を立てていただけだったのに、なぜか最後には父に「ごめんね」と言いたくなったのです。
自分でも、こんなところにつながるとは思っていませんでした。
不具合を報告したら、面倒な作業を頼まれた
ある会社が提供しているサービスで、不具合を見つけました。
そこで、状況を説明して報告したところ、担当者から返事がありました。
詳しい状況を確認するため、こちらで記録を作成して提出してほしいという内容でした。
それを読んだ瞬間、イラッ!
「なんで客の私が、そこまでしなきゃいけないの?」
「不具合の調査って、そちらの仕事じゃないの?」
「ただで人をこき使うな!」
頭の中では、次々と文句が出てきます(笑)。
もちろん、利用者にしか分からない状況もあるでしょうし、調査のために協力をお願いすること自体は理解できます。
でも、私にとっては手間のかかる作業でした。
そこまで対応するのは、正直面倒くさい。
そして、何より腹が立ったのです。
私は何をされたと感じたんだろう?
ひとしきり文句を言ったところで、少し自分の気持ちを振り返ってみました。
私は、いったい何にこんなに腹を立てているのでしょう。
「客なのに、面倒なことをやらされる」
「自分たちの仕事なのに、こちらに任せようとする」
そんな気持ちを眺めていると、一つの言葉が浮かんできました。
「面倒なことを一方的に押し付けられた!」
ああ、そうか。
私は、面倒なことを押し付けられたと感じたから、こんなに腹が立ったのかもしれない。
そこで、今度は少し違う方向から考えてみました。
「そういえば、私も誰かに面倒なことを押し付けていなかったかな?」
すると、真っ先に浮かんできたのが、父の顔だったのです。
思い返せば、父にはずいぶん助けてもらっていた
初めての仕事を辞めたとき
私は若い頃、就職して1年ほどで仕事を辞めたことがあります。
当時の私は相当メンタルが病んでしまい、自分で退職の手続きをすることもできず、父に対応してもらいました。
今考えると、父も困ったでしょうね。
自分の仕事や生活がある中で、娘の退職のことで動かなければならなかったのですから。
でも、当時の私は自分のことで精いっぱいでした。
父がどれだけ大変だったかなんて、あまり考えていなかった気がします。でも、父は文句ひとつも言わず、ただ粛々と動いてくれていたのです。
妊娠したときも、父が動いてくれた
その後、別れる別れないという恋愛関係の中で妊娠したことがありました。
そのときも、父は相手の男性と会って話をしてくれました。
「あなたの子どもなのだから、協力してあげてほしい」
そんなふうに、私と生まれてくる子どものことを考えて、相手に伝えてくれたのです。
今振り返ると、父にとっても簡単なことではなかったと思います。
それでも、私のために動いてくれていたんですよね。
今のパートナーとも会ってくれた
現在のパートナーとの関係でも、父が相手と会って話をしてくれたことがありました。
私が自分で自分の人生を決める自信がなく、父に相談して助けて欲しいとお願いしたからです。
振り返ってみれば、私は人生の節目で何度も父を頼っていました。
自分では対応できないことや、困ったことがあるたびに、父に助けてもらっていたのです。
それなのに、そんなことをすっかり忘れていました。
「お姉ちゃんばっかりずるい!」という怒り
実は私は、長い間、父に対して強い不満を抱いてきました。
理由は、姉との扱いの違いです。
子どもの頃から、姉の方が優遇されていると感じることがありました。
大人になってからも、経済的な援助や暮らし方の違いを見ては、
「どうしてお姉ちゃんばっかり?」
「私だって娘なのに!」
そんな気持ちになっていました。
その怒りは、長い年月をかけて大きくなっていったのだと思います。
そして最近、私は父や姉と距離を置くことにしました。
家族だからといって、嫌な気持ちを我慢してまで付き合うのは、もうやめようと思ったからです。
その選択について、今も後悔しているわけではありません。
けれども、今回自分の過去を振り返っていて、一つ気づいたことがありました。
私は、父が姉にしていることばかりを見て、父が私にしてくれたことを見なくなっていたのかもしれない。
なかったことにしてしまって、ごめんね
「押し付けるな!」
そう腹を立てていた私ですが、思い返せば、私自身も父にずいぶんいろいろなことを引き受けてもらっていました。
きっと、面倒なこともあったでしょう。
困らせたこともあったでしょう。
「もう、俺は天に召されたいよ!」と言われたこともあります。
それでも父は、私のために動いてくれていました。
なのに私は、「お姉ちゃんばっかりずるい!」という思いが強すぎて、そのことまで忘れてしまっていたのです。
そんなことを考えていたら、ふと、父に謝りたくなりました。
「お父さん、私のためにもいろいろしてくれていたんだね」
「それをなかったことにして、ごめんね」
不思議なことに、そんな気持ちが自然と出てきたのです。
もちろん、姉との扱いに不公平を感じてきた気持ちが、すべて消えたわけではありません。
今でも納得できないことはあります。
でも、それとは別に、父が私を助けてくれたことも事実です。
どちらか一方だけが正しいわけではないのでしょう。
不満もあるし、感謝もある。
人の気持ちって、そんなに簡単に割り切れるものではないんですね。
怒りの奥に、忘れていた気持ちがあった
今回、最初に感じたのは、会社の対応に対する怒りでした。
「面倒なことを押し付けるな!」
ただ、それだけだったのです。
ところが、その感情を少し掘り下げてみたら、自分が過去に父へ頼んできたことを思い出しました。
そして、長い間抱えていた怒りの中で、父への感謝まで見えなくなっていたことに気づいたのです。
もちろん、会社からの依頼と父との出来事に、直接的な因果関係があるのかは分かりません。
でも、日常のイライラをきっかけに、自分の過去を違う角度から見られたことは確かです。
私はこれまで、自分の嫌な気持ちに蓋をしてきたこともありました。
家族なんだから我慢しなきゃ。
親なんだから大切にしなきゃ。
そう思って、本当は嫌なのに付き合っていたこともあります。
でも、嫌いだという気持ちを認めることと、相手がしてくれたことに感謝することは、矛盾しないんですよね。
嫌だったことを、なかったことにする必要はない。
そして、ありがたかったことまで、なかったことにする必要もない。
今はそんなふうに感じています。
自分の本音は、まだまだ知らないことだらけ
50年以上生きてきても、自分のことを全部分かっているわけではないようです。
誰かに腹を立てていたら、思いがけず昔の自分を思い出す。
ずっと嫌いだった相手に、感謝していたことを思い出す。
そんな発見があるから、自分の心を見つめるのは面白いのかもしれません。
今回、父に謝りたいと思ったからといって、すぐに関係を修復しなければいけないとは思っていません。
これからどう付き合うかは、また別の話です。
ただ、今回気づいたことは、大切にしておきたいと思っています。
お父さん、いろいろしてくれてありがとう。
それを忘れてしまっていて、ごめんね。
最初はただ、面倒な作業を頼まれて腹が立っただけだったのに。
まさか、こんな気持ちになるとは思いませんでした。
さて、次のイライラからは、どんな自分が見つかるのでしょうか。

